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June 17, 2012

藤原新也と痕跡本

なみだふるはな
水俣に取材した「苦界浄土」の石牟礼道子と藤原新也の対談本。だがその内容というよりも巻頭の藤原の写真を見て嬉しくなった。83年に刊行された「全東洋街道」の藤原が、このカラー写真に滲み出る諦念のような独特の「彼岸の風味」が健在だったからだ。

藤原の写真は画面のそこかしこが滲んでいる。それは東洋を歩き尽くしてきたカメラのレンズにこびりついた西アジアの砂漠の砂であり、屠られた羊の脂であり、雑然とした東アジアのいわく言い難い場末の飲み屋にもうもうと漂う煙の粒子であったかも知れない。そのレンズに堆積した旅の厚みとしての微妙な汚れが、何気ない植物の葉に照る光を美しく滲ませている。

森山大道の写真は滲む光が反転している。暗室で掛ける紗によって闇が光の領域の方へと浸食しているのだ。これは夢の世界と現実のリアリティとの関係と見ても良いかも知れない。この丁度対極にあるのが藤原の作品なのだと、そんなことをよく考える。

痕跡本のすすめ
古書店の均一台に並ぶ本にはよく線引きや書込みなどがある。そんな本をみるといろいろと前の持ち主を想像して楽しい。そんなことを前から思っていたが、それを「痕跡本」と呼んで楽しもうというのが本書。

それは頁に挟まれたハガキであったり、昔のデパートのレシートだったり、巻末に書き込まれた感想だったりする。そんな実例が豊富な図版で楽しめる。それを見越してわざと書き込んだりする二重にひねくれた人が居たら面白いが(小生ではありません笑)

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