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December 21, 2008

滝田洋二郎 / 『おくりびと』

ここ1ヶ月ほどヨーロッパのとある街で過ごしていたので大分エントリが滞ってしまったが、なかなか朝の明けず、昼を過ぎてしばらくするとすぐに陽の沈んでしまう冬のヨーロッパ、ことに冬至近くの今頃は最も陽の短い時分で、今回もクリスマスで皆が休暇に入る時期に帰ってきた次第。この暗く冷たい大地の、最も暗い今という時期にクリスマスというイベントを設けて祝いたくなる気持ちがよく分かる。

しかし、刺身とか寿司とかが今や世界のスタンダードになっている感があって、中世から続く古い小さな町のレストランのメニューにまでsashimiなどという前菜が載っていたりすると複雑な気分になる。実は小生は海外では刺身や寿司などは極力食べないようにしているのだが、それは何故かと言えば、日本のように生魚を食べる歴史と習慣がある国ではその収穫から市場、そしてレストランまでの流通過程の全てにおいて生食を前提とした取り扱いをしているから安心して食べられるのであって、もともとそんな習慣がない国で、このレストランに運ばれるまでにどんな扱いをしているのか分からないものはどうも信用ならないという思いこみがあるからだ。流行っているからといってなんでも生で出せばよいと言うものではない。しかし、マルセイユやその他漁港等で食べた生牡蠣は美味しかったが。なんでも先の刺身や寿司がポピュラーになるにつけ、世界的に需要が高まりマグロが日本人の口に入りにくくなっているという。そもそも自分が食べられなくなるまでに他人に刺身の旨さを教える必要などないじゃないかと思う。良く昼飯にゆく銀座三州屋の大好きな海鮮丼が食べられなくなったらどうしてくれるんだ、などと思ったりする。

* * *

帰国の機内で観た映画、滝田洋二郎監督、本木雅弘主演の「おくりびと」は、以前から観に行きたいと思っていた作品だった。本木演ずる納棺師という特殊な職業から覗く家族の姿、人間の死、別れなどを描く佳作。映画のオフィシャルサイトでは納棺師となっているが、原作の青木新門の著作には納棺夫という言葉が使われている(「納棺夫日記」)。映画を観る前にふとしたことからこの著作を読んでいたので、原作との違いを比較しながら観た。
映画での主人公はオーケストラのチェリストでリストラされて故郷に戻り、この職業にたどり着くこととなるが、原作者は小説家を目指していた。原作者の青木新門はこの職業を通じて夥しい人の死を見続け、根強く残る職業的差別を受け止めながら真宗の深い理解と信仰にたどり着くのだが、この映画ではチェロの演奏がそれに対する暗喩なのかも知れない。幼い頃に生き別れた父親との邂逅は少々予定調和的筋運びとは分かっているものの胸に迫るものがある。ほか妻役に広末涼子、納棺社の社長に山崎努、その社員に余貴美子、風呂屋を営む幼なじみの母親役に吉行和子、その常連客で火葬場職員に笹野高史など。

山崎努はひと頃、また山崎努か、と思ってしまうほど邦画に露出して少々食傷気味ではあったが、この役はおそらく余人を以て代え難いのではないかと思うほど。広末涼子はなかなかキャスティングが難しい女優といつも思うのだが、この主題では少々浮いている感が否めず残念。夫の職業を知った時のとまどいや嫌悪感、そしてそれを受け止めるまでの心の襞を演じ分ける必要がある難しい役どころだが、もう少し内省的で陰翳がある女優ならば。笹野高史は最近脇役として光っていると思う。2008年、130分、松竹。


納棺夫日記 (文春文庫)

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  • Gangs of Kabukicho.
    渡辺克巳

    097154803X
    新潮社フォトミュゼの「新宿」が絶版となっているなかで最近刊行された渡辺克巳の最新写真集。洋書。



    先般亡くなった路上の写真家、渡辺克巳の写真集。インサイダーとして夜の新宿を流した彼の生の証はその写された人々と共に永く記憶されるべき。


    ジャパン
    倉田 精二
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    渡辺克巳とくれば倉田精二を挙げずにはいられない。日本のウィージーと言われたストリートフォトの神髄。都市の殺伐と虚像をこれほど表現した写真はない。

    にっぽん劇場写真帖
    寺山 修司・森山大道
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    寺山と森山のコラボレーションは「あゝ、荒野」以前にもこの作品で既に成就していた。68年刊のこの作品は強烈なコントラストとイメージで時代を色濃く表現している。腰巻きの惹句「奇才ふたりが火花を散らすイメージ地獄巡り」も凄いが、天井桟敷率いる寺山へぶつける森山の渾身の「返歌」が熱い。中平卓馬がカメラを構える有名なショットもあり。これを見ずに森山は語れない。


    奈良原の写真は既に絶版になった朝日新聞社の「昭和写真全仕事」を所有しているが、トラピスト修道院に取材した「沈黙の国」「人間の土地」「消滅した時間」などパースを駆使した知的で静謐な写真は独特の美。「無国籍地」は廃墟をモチーフにした写真集。その圧倒的な画面の構成美を。

    Cui Cui
    川内 倫子
    4902943026
    川内の作品は柔らかい光と深度の浅いクローズアップなどを多用して日常の「合い間」を独特の色調で表現している。小生の勝手な感覚ではあるが彼女の作品にはどこか「彼岸の匂い」のようなものが感じられてならない。明るく静かな日常。ふと視線を外して見上げる窓の外の空。こよないものたちの空間。この作品は家族の何気ない日常をテーマとした写真集。なぜだろう、頁をめくってゆくたびに胸が詰まってくるのは。


    この間東京都写真美術館で行われた回顧展で再び植田の仕事が再評価されている。砂丘シリーズに代表されるこのモダニズムはいつまでも古びない。

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