Flickr


  • www.flickr.com

exhibition

« 氷の花 | Main | 仰げば尊し »

February 25, 2008

癒しの踏み絵 / 荻上直子 『めがね』

めがね(3枚組)めがね、の検索語でamazonのDVDを検索すると何故かアダルト作品ばかりがヒットするのだけれど、そもそも眼鏡がそんな言葉だったかどうかは別として、この間、第58回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門でマンフレート・ザルツゲーバー賞というタイトルを獲得した荻上直子の作品「めがね」を欧州に向かう機内で観た。荻上といえば同様に小林聡美ともたいまさこを配役した「かもめ食堂」(2005年)だが、本作はその続編かと思ったもののテイストはより「癒し」の方向へシフトしたものとなったようだ。

教職にあるらしき小林聡美演じるタエコはおそらく日常の喧噪を離れる目的で海岸のホテルに行く。そこで出会う一風変わった人々、光石研、もたいまさこなどに当初はいらだちを感じながらも次第にそのゆったりとしたリズムを受け入れて行く。もたいも光石も、そしてそこに入り浸る生物教師役の市川実日子も、なぜそこにいるのかが明かされないまま物語は何事もなく淡々と過ぎて行く。

荻上は前作でも一つのモチーフとして和食を据えたように、本作でもそれこそ機内のまずい(エコノミーだからか)食事を摂りながらではなおさらのこと溜め息の出るような美味しそうな料理が出てくるが、これも今後「荻上らしさ」のキーワードになってゆくのだろう。

しかし、この癒しは少々とって付けたような感がなきにしもあらずだ。とって付けたというよりそこはかとなく押しつけがましさを感じてしまうのは小生がひねくれているからだろうか。この映画のキーワードである「たそがれる」ことをじわじわと要求されているかのごとき主人公と、実はそれを観る映画の観客にもこの映画を「分かる」ことが要求されている居心地の悪さ、と言っても良いかも知れないが、これは一種の踏み絵のような感じがしないでもない。本当の癒しが分かるアナタはこの映画にも共感する筈ですよ、さぁ、どうですか?というような。

そういう意味では、主人公が一旦そのいたたまれなさに宿を飛び出してゆくときに、やはり同じように飛び出してしかし再び戻らない人物を設定したならばよりその秘密結社風テイストが際立つと思うが、その後急転直下、登場人物ら全員でテロを犯してしまったりするというような不埒な物語の想像をしてしまう小生は余程疲れているのだろうか。あぶない。早くめがねのホテルへ行って一生懸命癒されなければ。

とはいうものの、前作同様、間(マ)の使い方はやはり秀逸だ。2007年、106分。

« 氷の花 | Main | 仰げば尊し »

CINEMA」カテゴリの記事

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21097/40248154

Listed below are links to weblogs that reference 癒しの踏み絵 / 荻上直子 『めがね』:

« 氷の花 | Main | 仰げば尊し »

NAVIGATION

GALLERY


  • Gangs of Kabukicho.
    渡辺克巳

    097154803X
    新潮社フォトミュゼの「新宿」が絶版となっているなかで最近刊行された渡辺克巳の最新写真集。洋書。



    先般亡くなった路上の写真家、渡辺克巳の写真集。インサイダーとして夜の新宿を流した彼の生の証はその写された人々と共に永く記憶されるべき。


    ジャパン
    倉田 精二
    4106024330
    渡辺克巳とくれば倉田精二を挙げずにはいられない。日本のウィージーと言われたストリートフォトの神髄。都市の殺伐と虚像をこれほど表現した写真はない。

    にっぽん劇場写真帖
    寺山 修司・森山大道
    4106024187
    寺山と森山のコラボレーションは「あゝ、荒野」以前にもこの作品で既に成就していた。68年刊のこの作品は強烈なコントラストとイメージで時代を色濃く表現している。腰巻きの惹句「奇才ふたりが火花を散らすイメージ地獄巡り」も凄いが、天井桟敷率いる寺山へぶつける森山の渾身の「返歌」が熱い。中平卓馬がカメラを構える有名なショットもあり。これを見ずに森山は語れない。


    奈良原の写真は既に絶版になった朝日新聞社の「昭和写真全仕事」を所有しているが、トラピスト修道院に取材した「沈黙の国」「人間の土地」「消滅した時間」などパースを駆使した知的で静謐な写真は独特の美。「無国籍地」は廃墟をモチーフにした写真集。その圧倒的な画面の構成美を。

    Cui Cui
    川内 倫子
    4902943026
    川内の作品は柔らかい光と深度の浅いクローズアップなどを多用して日常の「合い間」を独特の色調で表現している。小生の勝手な感覚ではあるが彼女の作品にはどこか「彼岸の匂い」のようなものが感じられてならない。明るく静かな日常。ふと視線を外して見上げる窓の外の空。こよないものたちの空間。この作品は家族の何気ない日常をテーマとした写真集。なぜだろう、頁をめくってゆくたびに胸が詰まってくるのは。


    この間東京都写真美術館で行われた回顧展で再び植田の仕事が再評価されている。砂丘シリーズに代表されるこのモダニズムはいつまでも古びない。

Blog People

無料ブログはココログ

search


  • Google

thank you!