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September 04, 2006

『出版業界最底辺日記』と『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』

新宿東口の雑踏をすり抜けながら紀伊国屋へ向かうと、その周囲は随分様変わりしたが紀伊国屋ビルだけは昔と相も変わらず、大島渚の「新宿泥棒日記」(1969年、ATG)のなかで横尾忠則が美術書を買い求めるシーンの紀伊国屋と殆ど変わらないのを思い出して、一瞬今ここが70年代なのではないかという錯覚にとらわれる。高校生あたりからもう随分長いことここで酔っぱらい、始発を待って夜を明かし、服を買い、映画を観て過ごした新宿は相変わらず汚くて危なっかしくて猥雑で、それだからこそ今でも降り立つと不思議と力が出てくる。人は変わっているがそこにいる人たちはいつも同じ。そんな感じだ。
そういえば今は南口が再開発されて人通りも多くなり明るくなっているが、東口から南口へと続く新宿名画座がある通り(カメラ好きにはラッキーカメラのあると言えば分かりやすいかも知れないが)はつい昔には夕方ともなるとかなり薄暗く、ヒゲの生えたおネエさん方がすれ違いざま「遊んでかない?」などと客を引いていたものだ。
一度友人と、あの客引きにもしこちらが興味を示したとしたら一体どうなるのか、という話で激論となり(笑)、あのおネエさんはフリーランスで彼女(?)自身が相手になるのだという説から、いやあれは単なる客引きで、それは恐ろしい店に連れて行かれ身ぐるみ剥がれて翌朝には裸で道に放り出されているのだ、などと今話題のハンカチ王子、早実の斉藤クンなどが聴けば軽蔑間違いなしの同じ高校生とは思えない話題で盛り上がっていたが、その後、突っ走り気味の友人が実際に路上で確認したと聞いて皆仰天した。話によればどうも前者のフリーランス説だったらしいが本当に訊いたのかは怪しいものだ。しかし暗がりだし酔って勘違いするオジサンがいたのだろうか、信じられないよな、などと言いながら、そのままルイードで知り合いのバンドがライブをやるなどという話題になったりした。ゴールデン街近くの四季の道でも袖を引かれて往生したことがあり大学生の先輩に「コイツまだ高校生だから。」などと助けてもらったことがあって、いま考えるとどう見ても子供なのに随分な客引きだと思う。

昨日はそんなことを思い出しながら歩行者天国を突っ切り二階の文庫コーナーへ。(枕が長い。)

塩山芳明の「出版業界最底辺日記」(ちくま文庫)と北尾トロ「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」(文春文庫)の新刊二冊を購入。

塩山の「出版業~」は大人向漫画の下請け編集者の日記。最近では当たりの部類だ。歯に衣着せぬ物言いを実名で快刀乱麻(かどうか)、アクの強さが身上のまさに「嫌われ者の記」。バブル後の業界の衰退や規制強化のなかでしたたかに生き延びる下請けの意地。大手出版社の編集者との掛け合いなど秀逸。事務所が神保町にあってなじみの店が出てくるが、小生贔屓の店(例えば飲食店)がコキ降ろされているのを読んで思わず苦笑したがここまで言えば返って小気味良いかも。
この人、邦画を中心とした映画の趣味が小生と殆ど重なっていて一風変わった映画ガイドとしても読ませてもらった(いや、今通読中。)編集は南陀楼綾繁。

北尾トロの「裁判長~」は裁判を野次馬的視線で片端から傍聴してゆくという著者の得意とする体験取材で、いつもながらの等身大のルポルタージュだ。最初は右も左も分からない裁判も通い詰めるうちに次第にその仕組みや傍聴の勘所が分かってくる。そのうち、裁判傍聴を趣味とするいわば傍聴マニアの存在というものが次第に明確になりついには巻末に傍聴サークルメンバーとの座談会まであって笑える。こんな趣味のジャンルがあるとは世の中いくつになっても知らないことだらけだと思うが、しかしどの世界でもマニアとは切実で滑稽な存在だ。文庫版解説は角田光代。

出版業界最底辺日記―エロ漫画編集者「嫌われ者の記」
出版業界最底辺日記―エロ漫画編集者「嫌われ者の記」

裁判長!ここは懲役4年でどうすか
裁判長!ここは懲役4年でどうすか

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  • Gangs of Kabukicho.
    渡辺克巳

    097154803X
    新潮社フォトミュゼの「新宿」が絶版となっているなかで最近刊行された渡辺克巳の最新写真集。洋書。



    先般亡くなった路上の写真家、渡辺克巳の写真集。インサイダーとして夜の新宿を流した彼の生の証はその写された人々と共に永く記憶されるべき。


    ジャパン
    倉田 精二
    4106024330
    渡辺克巳とくれば倉田精二を挙げずにはいられない。日本のウィージーと言われたストリートフォトの神髄。都市の殺伐と虚像をこれほど表現した写真はない。

    にっぽん劇場写真帖
    寺山 修司・森山大道
    4106024187
    寺山と森山のコラボレーションは「あゝ、荒野」以前にもこの作品で既に成就していた。68年刊のこの作品は強烈なコントラストとイメージで時代を色濃く表現している。腰巻きの惹句「奇才ふたりが火花を散らすイメージ地獄巡り」も凄いが、天井桟敷率いる寺山へぶつける森山の渾身の「返歌」が熱い。中平卓馬がカメラを構える有名なショットもあり。これを見ずに森山は語れない。


    奈良原の写真は既に絶版になった朝日新聞社の「昭和写真全仕事」を所有しているが、トラピスト修道院に取材した「沈黙の国」「人間の土地」「消滅した時間」などパースを駆使した知的で静謐な写真は独特の美。「無国籍地」は廃墟をモチーフにした写真集。その圧倒的な画面の構成美を。

    Cui Cui
    川内 倫子
    4902943026
    川内の作品は柔らかい光と深度の浅いクローズアップなどを多用して日常の「合い間」を独特の色調で表現している。小生の勝手な感覚ではあるが彼女の作品にはどこか「彼岸の匂い」のようなものが感じられてならない。明るく静かな日常。ふと視線を外して見上げる窓の外の空。こよないものたちの空間。この作品は家族の何気ない日常をテーマとした写真集。なぜだろう、頁をめくってゆくたびに胸が詰まってくるのは。


    この間東京都写真美術館で行われた回顧展で再び植田の仕事が再評価されている。砂丘シリーズに代表されるこのモダニズムはいつまでも古びない。

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