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March 26, 2006

ニエプスの見た夢 / 田所美恵子写真集『針穴のパリ』

針穴のパリ----田所美惠子写真集
ピンホール写真で著名なパリ在住の写真家、田所美恵子の写真集「針穴のパリ」が河出書房新社より出版された。ピンホール写真は世界中に愛好家がいる訳だがFlickrでもそれこそおびただしい写真が毎日アップされていて小生にはどちらかというと趣味性の強いイメージがあるばかりだった。しかし随分昔に田所の写真を雑誌でみてその芸術性の高さに圧倒され、その理由のない思いこみを挫かれたのだった。彼女にとって表現の欲求を実現するにふさわしい手段を求めた末に針穴=ピンホールに行き着いたということなのだろうと想像する。ピンホールは当然のことながらレンズを使わず、微小な穴をかすかに通る光の屈折現象で撮影する。そこには対象の光と、少しばかり湿った銀塩乳剤の間を遮るものはなにもない。かつてロラン・バルトがその著書「明るい部屋」(みすず書房)での、亡くなった彼の母親の幼い頃の写真から始まるこの美しい著作の、撮影の時にそこにあった光が今見ている写真の光そのものとして存在しているという、そのイメージが頭にこびりついていて写真を見るたびにそれを思い出すのだが、遮るものなく光を定着させる針穴写真とはまさしくそういうイメージにふさわしい。それは魔法や秘儀めいたものにすらに近いのではないかと想うことがある。
写真というものの原初のあり方、カメラオブスキュラの昔から写真術を編み出したニエプスまでの系譜に田所の写真はどこか繋がっている。いままで田所の著作は針穴の技法書があったもののその仕事が見られる写真集がなかったこともあって今回の出版は素直に嬉しい。

■関連サイト
- Pinhole Photography by Mieko Tadokoro

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  • Gangs of Kabukicho.
    渡辺克巳

    097154803X
    新潮社フォトミュゼの「新宿」が絶版となっているなかで最近刊行された渡辺克巳の最新写真集。洋書。



    先般亡くなった路上の写真家、渡辺克巳の写真集。インサイダーとして夜の新宿を流した彼の生の証はその写された人々と共に永く記憶されるべき。


    ジャパン
    倉田 精二
    4106024330
    渡辺克巳とくれば倉田精二を挙げずにはいられない。日本のウィージーと言われたストリートフォトの神髄。都市の殺伐と虚像をこれほど表現した写真はない。

    にっぽん劇場写真帖
    寺山 修司・森山大道
    4106024187
    寺山と森山のコラボレーションは「あゝ、荒野」以前にもこの作品で既に成就していた。68年刊のこの作品は強烈なコントラストとイメージで時代を色濃く表現している。腰巻きの惹句「奇才ふたりが火花を散らすイメージ地獄巡り」も凄いが、天井桟敷率いる寺山へぶつける森山の渾身の「返歌」が熱い。中平卓馬がカメラを構える有名なショットもあり。これを見ずに森山は語れない。


    奈良原の写真は既に絶版になった朝日新聞社の「昭和写真全仕事」を所有しているが、トラピスト修道院に取材した「沈黙の国」「人間の土地」「消滅した時間」などパースを駆使した知的で静謐な写真は独特の美。「無国籍地」は廃墟をモチーフにした写真集。その圧倒的な画面の構成美を。

    Cui Cui
    川内 倫子
    4902943026
    川内の作品は柔らかい光と深度の浅いクローズアップなどを多用して日常の「合い間」を独特の色調で表現している。小生の勝手な感覚ではあるが彼女の作品にはどこか「彼岸の匂い」のようなものが感じられてならない。明るく静かな日常。ふと視線を外して見上げる窓の外の空。こよないものたちの空間。この作品は家族の何気ない日常をテーマとした写真集。なぜだろう、頁をめくってゆくたびに胸が詰まってくるのは。


    この間東京都写真美術館で行われた回顧展で再び植田の仕事が再評価されている。砂丘シリーズに代表されるこのモダニズムはいつまでも古びない。

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