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November 22, 2005

『真夜中の弥次さん喜多さん』と『ハサミ男』 / 麻生久美子オールナイト

眩暈がしそうになったら空を眺めると良いのです。
中央線の長いエスカレータに並んでプラットフォームに上がるまでの間、前に並ぶ女性の着ている服の千鳥格子を眺めているうちに芒と眩暈がして、しばらくベンチで休んでいた。まるでエッシャーのだまし絵のようなその執拗な反復模様はどうも昨年悩まされた眩暈をまた呼び覚ますきっかけになりそうな気配だったので暴れそうな子をあやすようにしてしばらく眼を閉じていた訳だが、30分程じっとしていたら段々収まってきた。
そのまま帰宅したが、何故かこういうことがあると随分長い間観ていなかった、というより惹かれるものがなかったというのが本当だが、久しぶりに映画というものを観たくなりTSUTAYAで邦画二本を借りた。

「真夜中の弥次さん喜多さん」(2005年、124分)は落語をモチーフとしたテレビドラマ「タイガー&ドラゴン」でなかなかの才能と思っていた大人計画の宮藤官九郎初監督作品。原作はしりあがり寿の同名漫画だ。真夜中の弥次さん喜多さん DTS スタンダード・エディション以前から弥次喜多はホモセクシュアルの関係だったという話は知っていたが、これをプロットの基線に敢えて据えるというのは邦画としては返って斬新だ。このテーマをハリウッドが巧妙に隠し、あるいは隠喩のなかに沈めていたことをルポルタージュした「セルロイド・クローゼット」(95年、104分)をまず思い出した。最近ではセクシュアリティをテーマとした作品も増えているが、それも例えばレズビアンがまるで流行の服を着るかのような装いで扱われているような風潮が一時期あって、特にそんなセクシュアリティを持たない少女達や作家らに自らのアイデンティティを際立たせる一種のアクセサリ、もしくはアートっぽさを出すためだけに「使われて」いたのが気に障った。本当の彼女らはヘテロの我々(もしくは筆者)と同じように切実で日常的なものに違いない。それをこの作品では与えられた背景として特にそれをあからさまなテーマとしていないことがまずは良い。
とにかくこの作品は頭を空にして楽しめばよい。クドカンの想像力はまるで子供のようだ。自分が快く楽しいと感じられるものを何の障碍もなく映像として表現することの小気味よさ。これは実は監督がもっとも楽しんでいる作品で、観客はその「おこぼれ」に預かっているに過ぎない。三途の川と荒川良々の下りはなかなかの想像力だ。未見の方はお楽しみ。一瞬の出演ながら古川新太がいい味を出している。七之助、勘九郎の親子競演も見ものだ。


一方、同時に借りた「ハサミ男」(2004年、114分)は殊能将之になる同名小説の映画化。ハサミ男麻生久美子、豊川悦司主演、池田敏春監督。プロットは小説がメフィスト賞を授賞した作品だけあり、脇役のセリフ棒読みとぎこちない演技にいかにもなB級臭を感じるのものの、なかなか楽しめた。というより、そもそも麻生久美子が出ているから借りただけで話になにも期待していなかったものの観てみるとそれなりのプロットだったということかも知れない。

実は「真夜中の~」にも麻生久美子が出ていて、偶然にも「麻生久美子二本立てオールナイト」となった訳。
というより無意識に麻生繋がりで選択していたということが本当のところ。話などどうでも良かったりして。

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