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August 22, 2005

ブッククロッシング(BookCrossing)と書籍の「草の根」流通

学生のころ、読みたいと思っていたミステリや話題の新刊が複数上梓されると友人と購入の分担を決めて回し読みしたものだった。例えば趣味が合う3人が集まれば1冊分の費用で3冊が読めるという一種の金欠互助システムだ。今でこそ仕事柄、縁のある新刊本はいわゆる見本というかたちでそれこそ発売前に読めるのだが、読みたい本は何故か仕事に関係しないというマーフィーの法則でなかなか上手くいかない。図書館にもなかなか入らないし、入っても人気の作品は順番待ちとなる。

さて、最近ブッククロッシングなるムーブメントが人々の口の端に上るようになった。

産経新聞の記事(下記)でおおよそのシステムが理解できるのだが、簡単に言うと、誰かに読んで欲しいと思った書籍を街のどこかに、例えば喫茶店や公園のような公共施設、駅のベンチなどに誰かが手にしてくれることを期待して放置し、その人から人へと渡る過程をweb上でトレースするという試みだ。つまり書籍というモノを媒介とした一種のソーシャルネットワークであり、ネットを媒介とした「回し読み」なのだ。この「街中を図書館に」「本に旅をさせる」というファンタジックな試みに参加するメンバーは前掲の記事によると世界で35万人、既に199万冊が登録されているという。これらがすべて街に解き放たれ、もしくは人の手に渡っていることになる。日本では革新的な古書籍流通を実践するCOW BOOKSが中心となって活動しているようだ。

この試みは古書籍の流通というものを考えるとき、実は一つの「事件」と言って良い程のインパクトがあると思う。
古書店、もしくは図書館の機能とは、書籍流通の過程では消費者の手に渡る前のいわばハブ=中心の役割をはたすものだ。そこに行けば目的の本に出会えるという社会共通の認識があって成立する。しかし、この運動によりその意味は根底から解体され、一般消費者間でのいわゆる「草の根」流通が「偶然」という手段で行われるということになる。そこにはなんらの経済活動が行われないことがポイントだろう。
今のシステムでは、人と書籍の「偶然」の出会いというものに何らかのノスタルジーが付与され、それにこそこの面白みがあるのだが、これを一歩進めて、本の放置を行う特定の場所、例えば個人の自宅、駅(東京メトロにいくつかの図書コーナーがあって同様の機能を果たしている。)などが設けられた上でweb上にて放置の場所情報が付与されるようになれば、それは既に偶然の出会いではなく、ひとつの書籍流通として自立したものとなるだろう。これはネットというものを抜きにして語れないものだ。

その意味で、売り物としての書籍とBookCrossingを並行して扱うCOW BOOKSの試みは非常に興味深い。
一般の古本屋、もしくは大手に押され苦しいといわれる街の新刊書店こそ、このBookCrossingのコーナーを設けることを推奨したい。一見、商売に対立するようではあるが、全体としてみた場合おそらく影響は少なく、むしろ集客効果の方が大きいのではないだろうか。というのも実際のところ、価値のある本(古書価の高いという意味ですが)が放流される確率は非常に低いと思われるからだ。

これをみて、ひと頃論争となったブックオフの是非、つまり、古書籍業界のブックオフへの反発と、実は古書籍業界は価格の低い本を見捨てており、それを活かしているのがブックオフであるという反論を思い出した。(正論を吐くことで有名なネット古書店の絶望書店「本とは何なのか!?」を参照されたし。面白いです。)この運動はまさしくこの部分を担うシステムを潜在的に備えている。

このBookCrossingという試みが今後どのような動きになってゆくのか。日本で定着するのかしないのか。まだまだすべての人がネットに繋がる訳ではない現状で、果たしてどこまで社会的な力を持ち得るか。今後の動向が楽しみだ。

BookCrossing.com 本家本元サイト
産経新聞ENAK「米国発 広がる「ブッククロッシング」 」
はてなダイアリー「ブッククロッシング」

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Comments

はじめまして。のぶと申します。
トラックバックありがとうございました。

たしかに「価値のある本」は古本屋に売りに行く方がよいですよね。
ブッククロッシングで流通するかもしれない本は古本屋で流通する本とは真逆かもしれない、とさえ思いました。

だって街中に放置する場合、何気なく手にとって持って帰ってくれるのを期待しているわけで、文庫本とかペーパーバックとかの方が気楽に持って帰ってくれそうに思うのです。
そして、自分に限って言えば、大荷物とか重いものを持ち歩くのが嫌いなので、しっかりした装幀の大きな本だったら、手を伸ばさない可能性が大きいですから。

古本の流通という視点では、あまり深く考えたことがなかったので、なるほどなあ、と、感心しながら、とても興味深く読ませていただきました。

こんばんは、始めまして。管理人のazusayumiです。これを記事にするに当たってネットで調べたのですが、本当に実践されている方の情報があまりなくて、とても参考になりました。
放流する時のときめきというか、想像すると私もやってみたくなっちゃいましたっ。おっしゃるとおり!あまり高い本は後ろめたさで持って帰りづらいかも。そういう本は途中で本当の流通に乗ってしまうかも知れませんしね。でも、この感覚が理解できる話の分かるひとの手に渡ってゆけば、思わぬ感動が味わえるのかも知れませんね。
こういうアイデアは本という不可思議なモノならではだと思います。
古書店で手に取った本に、元の持ち主のハガキとか、昼飯に食べたカレーライスの食券とかが挟まっていると無性に嬉しくなるのですが、例えば、放流された本を自分が手に取ることを考えても、それに似た感慨があるのではないかと想像します。
放流されたその後のレポートも楽しみにしています。

はじめまして。ブッククロッシングについてtbをいただきます。
今まで日本語サイトがないことも普及がいまひとつだったことの要因かと。
しかしこのたび日本での公式サイトが立ち上がったようです。
楽しみに見守るひとりです。

こんにちは。管理人のazusayumiと申します。
ブッククロッシング、日本の公式サイトが立ち上がったのですか。ググってみましたが、
http://www.bookcrossing.jp/
ここですね。

ブッククロッシングゾーンもこれからのようですね。たしかに商売に結びつければ書籍流通の活性化になるとも思うし重要な視点とは思うのですが、個人的には非営利、個人ベースでの流通にこそ、この面白みがあるのではないかと考えています。
これからの成り行きが気になりますね。

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