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May 18, 2005

吾妻ひでお / 『失踪日記』

失踪日記高校生の頃、吾妻ひでおが異常に好きなクラスメイトがいて心酔と言っても良い位ののめり込みようだったが、彼の教科書を覗くと吾妻の描くマンガの模写で一杯だった。70年代の終わり頃のことだったから、まだ「おたく」などという言葉のかけらもなくて、ただ「マニアックなヤツ」などと言われていたと思うが、当時の個人的な感想を言えば、吾妻ひでおのマンガはどうもこのマニア性が強いような感じがあって、ファンの方には怒られそうだがどうしてもその面白さの勘所が理解できなかった。
その頃、私はといえば朝日ソノラマから出ていた月刊誌「マンガ少年」を毎月欠かさず読んでいたものの、マガジン、ジャンプなどの週刊少年誌はほとんど読んでいなかった。スポ根、学園モノなどの少年誌にありがちなテーマに全然惹かれなかったからだ。姉の影響で「りぼん」を読んでいたこともあってか、むしろ少年誌はガキっぽいと馬鹿にしていたのであった。今思うとヤなガキだったが、ヤなガキがいま、ヤなジジイになったというワケ。
そのころのマンガ少年では、ますむらひろしの「アタゴオル物語」や高橋葉介「ヨウスケの奇妙な世界」、石坂啓「下北なあなあイズム」、竹宮恵子「地球(テラ)へ」などがお気に入りだったが、かの手塚治虫「火の鳥」が連載されており、毎月発売日を心待ちにしていた。
さて、話が随分飛んでしまったが、この「失踪日記」は神田三省堂1Fレファレンスコーナーの脇にうずたかく積まれていてその勢いで購入し一読没頭。失踪の事実すら知らなかったが、いわゆるホームレスになっていたなんて。大泉実成「消えた漫画家」の一人に遅れて参加ということか。よく言われるが殊にマンガ家は徹底的、無理矢理に才能を絞り尽くされ使い捨てられて仕舞いには精神に変調を来すという事例が多いらしい。しかし実際には笑えない内容を、ここまで自分を客観化しエンタテインメントとして昇華する力量には恐れ入った。さすがにプロの仕事だ。警察に保護され、そこで吾妻のファンである刑事から色紙にサインを求められるなどは涙なくして読めない。
アル中病棟やガス工事会社での人間模様、人物造形はさらりと描いているようでいてやはり非凡だ。これを描かせているのは作家の業なのだろう。自身の内臓をさらけ出すようないわばコンサバティブな私小説の方法論を吾妻調の丸っこい画で見せたらこうなるということだろうか。久しく出会えなかった面白さだ。

■月球儀通信関連エントリ
- 吾妻ひでお / 『うつうつひでお日記』

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  • Gangs of Kabukicho.
    渡辺克巳

    097154803X
    新潮社フォトミュゼの「新宿」が絶版となっているなかで最近刊行された渡辺克巳の最新写真集。洋書。



    先般亡くなった路上の写真家、渡辺克巳の写真集。インサイダーとして夜の新宿を流した彼の生の証はその写された人々と共に永く記憶されるべき。


    ジャパン
    倉田 精二
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    渡辺克巳とくれば倉田精二を挙げずにはいられない。日本のウィージーと言われたストリートフォトの神髄。都市の殺伐と虚像をこれほど表現した写真はない。

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    寺山と森山のコラボレーションは「あゝ、荒野」以前にもこの作品で既に成就していた。68年刊のこの作品は強烈なコントラストとイメージで時代を色濃く表現している。腰巻きの惹句「奇才ふたりが火花を散らすイメージ地獄巡り」も凄いが、天井桟敷率いる寺山へぶつける森山の渾身の「返歌」が熱い。中平卓馬がカメラを構える有名なショットもあり。これを見ずに森山は語れない。


    奈良原の写真は既に絶版になった朝日新聞社の「昭和写真全仕事」を所有しているが、トラピスト修道院に取材した「沈黙の国」「人間の土地」「消滅した時間」などパースを駆使した知的で静謐な写真は独特の美。「無国籍地」は廃墟をモチーフにした写真集。その圧倒的な画面の構成美を。

    Cui Cui
    川内 倫子
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    川内の作品は柔らかい光と深度の浅いクローズアップなどを多用して日常の「合い間」を独特の色調で表現している。小生の勝手な感覚ではあるが彼女の作品にはどこか「彼岸の匂い」のようなものが感じられてならない。明るく静かな日常。ふと視線を外して見上げる窓の外の空。こよないものたちの空間。この作品は家族の何気ない日常をテーマとした写真集。なぜだろう、頁をめくってゆくたびに胸が詰まってくるのは。


    この間東京都写真美術館で行われた回顧展で再び植田の仕事が再評価されている。砂丘シリーズに代表されるこのモダニズムはいつまでも古びない。

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