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May 16, 2005

堕落と再生 / 岡崎京子 『へルタースケルター』

ヘルタースケルターこのところコミックばかり続けて読んでいる。この岡崎京子「へルタースケルター」、吾妻ひでお「失踪日記」、やまじえびね「フリー・ソウル」、魚喃キリコ「Strawberry shortcakes」、安部慎一「美代子阿佐ヶ谷気分」などなど再読も含め新旧取り混ぜてコミック漬けの日々。プチ幸せ。振り返るとなぜかフィールヤング系が多いのは気づかない振りをしてもらえると助かります。で、この「へルタースケルター」、主人公「りりこ」は全身のほとんどを整形して得た美貌でモデルから女優としても成功してゆく。しかしそれは本人の人格とはなんの関係もなく消費される単なる偶像に過ぎず、その栄光とは裏腹に孤独の影が次第に濃くなってゆく。その裏返しとも言える放埒でインモラルな気晴らしで周囲を翻弄しながら、ピグマリオンとしての自分と一人の女の子としての乖離に精神が次第に崩壊して行く。人気の凋落がそれに追い打ちをかけて、その堕落は加速してゆき・・・実はこれは虚構と実存のギャップに精神を病む現代の心のありようそのものだ。何者かでありたいと痛切に願うが、何になりたいのかが分からない。現実のありようを受け入れられないが、その解決の糸口が見つからない。しかし「りりこ」はどうあれ最終的に自分で決着をつけるのだ。この結末に至るまでの描写はドラマとして少なからず消化不良だとは思うが、結局どこかで何らかの決着、自分を受け入れるすべを人は見つけざるを得ないという主題が浮かんでくる。この作品の発表直後に作者は今に至るまで再びペンを取れない程の重篤な交通被害事故に遭い現在もリハビリ中だという。この作品で張られた伏線や非合法な医院などの社会問題への視点、それを暴く検事などの人物描写にまだまだ練り足らない部分があるものの、その後の洗練を予感させるだけに早く恢復されて是非続編をものしてもらいたいと思う。

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    渡辺克巳

    097154803X
    新潮社フォトミュゼの「新宿」が絶版となっているなかで最近刊行された渡辺克巳の最新写真集。洋書。



    先般亡くなった路上の写真家、渡辺克巳の写真集。インサイダーとして夜の新宿を流した彼の生の証はその写された人々と共に永く記憶されるべき。


    ジャパン
    倉田 精二
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    渡辺克巳とくれば倉田精二を挙げずにはいられない。日本のウィージーと言われたストリートフォトの神髄。都市の殺伐と虚像をこれほど表現した写真はない。

    にっぽん劇場写真帖
    寺山 修司・森山大道
    4106024187
    寺山と森山のコラボレーションは「あゝ、荒野」以前にもこの作品で既に成就していた。68年刊のこの作品は強烈なコントラストとイメージで時代を色濃く表現している。腰巻きの惹句「奇才ふたりが火花を散らすイメージ地獄巡り」も凄いが、天井桟敷率いる寺山へぶつける森山の渾身の「返歌」が熱い。中平卓馬がカメラを構える有名なショットもあり。これを見ずに森山は語れない。


    奈良原の写真は既に絶版になった朝日新聞社の「昭和写真全仕事」を所有しているが、トラピスト修道院に取材した「沈黙の国」「人間の土地」「消滅した時間」などパースを駆使した知的で静謐な写真は独特の美。「無国籍地」は廃墟をモチーフにした写真集。その圧倒的な画面の構成美を。

    Cui Cui
    川内 倫子
    4902943026
    川内の作品は柔らかい光と深度の浅いクローズアップなどを多用して日常の「合い間」を独特の色調で表現している。小生の勝手な感覚ではあるが彼女の作品にはどこか「彼岸の匂い」のようなものが感じられてならない。明るく静かな日常。ふと視線を外して見上げる窓の外の空。こよないものたちの空間。この作品は家族の何気ない日常をテーマとした写真集。なぜだろう、頁をめくってゆくたびに胸が詰まってくるのは。


    この間東京都写真美術館で行われた回顧展で再び植田の仕事が再評価されている。砂丘シリーズに代表されるこのモダニズムはいつまでも古びない。

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