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December 01, 2004

渡辺克巳 / 『新宿群盗伝伝』(ヤゲンブラ選書) 

ルポルタージュ書の晩聲社より70年代後半から80年代初頭にかけて出版された「ヤゲンブラ選書」はカウンターカルチャーに根ざした個人ベースのドキュメントで知られるが、サイトを確認するといまだに在庫があって販売を続けていることが分かり少々吃驚した。80年代中盤、まだ学生の頃に写真に興味を持ちだしてから、カメラ毎日編集長で後に評論家となった西井一夫の著作だったか、渡辺克巳の存在を知り、ヤゲンブラ選書「新宿群盗伝伝」(晩聲社、82年)に巡り会った。渡辺についてはあまり資料が見つからず、この自伝がほとんど唯一の寄る辺であるが、新潮社のフォトミュゼ「新宿 1965‐97」やワイズ出版写真叢書「Hot Dog―新宿1999-2000」が今でも入手できる写真集だろう。
渡辺は故郷盛岡から上京し、上野の東条会館写真部に勤めるも三年で退社、以後26歳で新宿の夜を流すフリーランスとなる。その商売とは、新宿に息づく人々からポートレートの撮影を請け負い、現像して翌日に手渡すという「流しの写真家」なのである。その値段、モノクロ手札判3枚で200円だ。この「流しの写真家」という商売には実は渡辺以前にその先達が存在していた。渡辺が先輩と呼び、自分も新宿を流したいとあこがれた人物だ。東条会館に勤めたのもこの先輩の助言からだった。この先輩がどのような人物だったかは名前も含めて明らかにされていない。しかし、渡辺が流し始めたころ、客から「やっぱりおめえの先生のほうがうまいな、これじゃダメだ。」と叱られ、「おめえか、新しい写真屋は。」(「新宿群盗伝伝」p77、82年)といわれているのは、渡辺以前から新宿にはこのようなスタイルの写真家が存在し認知されていたことを伺わせる。これは都市のフォークロアとしても非常に興味深い。
次第に受け入れられてくると依頼も増える。渡辺の写真には、エネルギッシュで猥雑で汚いがどこか暖かい「偉大な子宮のような」(同、p131)新宿の人々の飾りのない姿が躍動している。他者からの視点=うわべだけのドキュメントでは決して見られない、夜の人々のこころを開いた表情は、インサイダーとしての渡辺でなければ撮れないものだ。
なお、「新宿群盗伝伝」というタイトルは、処女写真集「新宿群盗伝」(薔薇画報社、73年)から採られている。

4106024306新宿 1965‐97―娼婦、ヤクザ、オカマ、ヌード嬢…彼らが「流しの写真屋」の客だった
渡辺 克巳
新潮社 1997-11

by G-Tools

- HotDog―新宿1999‐2000 渡辺克巳写真集 (ワイズ出版、写真叢書、2001年)

- ディスコロジ-(晩聲社 1996)
ディスコロジ-

Gangs of Kabukicho.
Gangs of Kabukicho.


【訃報】
2006年1月29日 路上の写真家、渡辺克巳が肺炎のため永眠との報。
ご冥福をお祈り致します。 
「月球儀通信」管理人azusayumi拝

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    渡辺克巳

    097154803X
    新潮社フォトミュゼの「新宿」が絶版となっているなかで最近刊行された渡辺克巳の最新写真集。洋書。



    先般亡くなった路上の写真家、渡辺克巳の写真集。インサイダーとして夜の新宿を流した彼の生の証はその写された人々と共に永く記憶されるべき。


    ジャパン
    倉田 精二
    4106024330
    渡辺克巳とくれば倉田精二を挙げずにはいられない。日本のウィージーと言われたストリートフォトの神髄。都市の殺伐と虚像をこれほど表現した写真はない。

    にっぽん劇場写真帖
    寺山 修司・森山大道
    4106024187
    寺山と森山のコラボレーションは「あゝ、荒野」以前にもこの作品で既に成就していた。68年刊のこの作品は強烈なコントラストとイメージで時代を色濃く表現している。腰巻きの惹句「奇才ふたりが火花を散らすイメージ地獄巡り」も凄いが、天井桟敷率いる寺山へぶつける森山の渾身の「返歌」が熱い。中平卓馬がカメラを構える有名なショットもあり。これを見ずに森山は語れない。


    奈良原の写真は既に絶版になった朝日新聞社の「昭和写真全仕事」を所有しているが、トラピスト修道院に取材した「沈黙の国」「人間の土地」「消滅した時間」などパースを駆使した知的で静謐な写真は独特の美。「無国籍地」は廃墟をモチーフにした写真集。その圧倒的な画面の構成美を。

    Cui Cui
    川内 倫子
    4902943026
    川内の作品は柔らかい光と深度の浅いクローズアップなどを多用して日常の「合い間」を独特の色調で表現している。小生の勝手な感覚ではあるが彼女の作品にはどこか「彼岸の匂い」のようなものが感じられてならない。明るく静かな日常。ふと視線を外して見上げる窓の外の空。こよないものたちの空間。この作品は家族の何気ない日常をテーマとした写真集。なぜだろう、頁をめくってゆくたびに胸が詰まってくるのは。


    この間東京都写真美術館で行われた回顧展で再び植田の仕事が再評価されている。砂丘シリーズに代表されるこのモダニズムはいつまでも古びない。

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