Flickr


  • www.flickr.com

exhibition

« 『愚か者死すべし』にオロカモノ走る | Main | untitled 29 Nov,2004 »

November 28, 2004

崔洋一 / 『血と骨』

新宿コマ前の小屋に行くのは普段あえて避けているので久しぶりだった。関係ないが今は無き噴水の前を通るたびに「俺たちの旅」のグズロクを思い出してしまう。さて、本題。これは梁石日原作になる同名小説の映画化だが、これほどビートたけしの役者としての本質に合う役柄はない。おそらく、映画の企画は彼を主役に据えることが無ければ成り立たなかっただろう。物語は梁石日の父親がモチーフになっており、大正の末、少年時代の金俊平が済州島から日本に渡航し、戦中戦後を経て北へ引き上げるまでの過激すぎる半生を家族の愛憎を絡めて描いたものである。
その過激の程度は確かに常軌を逸しており、充分映画的に魅力的なものを持っているが、モチーフとしては特別に数奇という訳ではない。むしろ特に昭和という時代においては描かれがちな家父長としての強権的な父親像なのだ。ただそれが度を超しているというに過ぎないのである。在日としての不遇と辛苦が背景に強烈に存在してはいるが、実はこれはありきたりな昭和の物語なのだと思う。
一代でたたき上げた蒲鉾工場の成功と高利貸しへの転身、徹底的な吝嗇と憎悪、それに翻弄される家族と滑稽なまでの暴力。原作を読んでいないのでなんとも言えないが、この金俊平という男の来し方が映画では描かれていないので、それが不明なまま観客は暴力をひたすら見せられることになる。この肉付けをもう少し、と思うのは私だけだろうか。
しかし、つまらなかったといいたい訳ではない。むしろ逆に出色の出来映えであると思う。これは後に残る映画だろう。
脇役の面々に個人的に好きな俳優が揃ったことも気に入った理由だ。特に北村一輝は三池崇史の「日本黒社会」(99年)以来のファンでもある。黒沢清「地獄の警備員」(92年)でデビューした松重豊はここに来て実力のある脇役としてますます存在感を増してきており今後の活躍が楽しみだ。ほか、河瀬直美「火垂」(2001年)の中村優子を見いだしたのはこの映画の存在意義の一つだととりあえず言ってしまおう。
またセットや小道具のディテールをおろそかにしていないのも好感が持てる。これは時代を描く映画では必須であり、物語以上に顧みられてよいことなのだが、特に邦画において軽んじられているのは何故か。予算の問題かも知れないが。
個人的には大好きな大杉連と田口トモロヲが出てなかったのがこの映画の良さの一つだといったら、怒られるかな。
崔洋一も今までの作品とは異なる思い入れがあったのではないかと想像するに足る重厚な作品だ。(2004年、144分)

« 『愚か者死すべし』にオロカモノ走る | Main | untitled 29 Nov,2004 »

CINEMA」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21097/2086369

Listed below are links to weblogs that reference 崔洋一 / 『血と骨』:

» 映画監督の崔洋一さんが登場!【1/5】7'16'' [山形国際ドキュメンタリー映画祭 応援番組]
映画監督の崔洋一さんがポートサイドステーションに登場! 山形国際ドキュメンタリー映画祭のインターナショナル・コンペティションで審査委員長を務めた崔洋一さんにお話を聞くことができました。 インターナショナル・コンペティションは世界中から950本ものドキュメンタリー映画が集まり、“いま”現在の世界が浮かび上がるようなバラエティに富む最先端のドキュメンタリーを紹介し、優秀な作品を選ぶというものです。 崔洋一監督は「月はどっちに出ている」や「マークスの山」、「クイール」といったヒット作を連発し、... [Read More]

« 『愚か者死すべし』にオロカモノ走る | Main | untitled 29 Nov,2004 »

NAVIGATION

GALLERY


  • Gangs of Kabukicho.
    渡辺克巳

    097154803X
    新潮社フォトミュゼの「新宿」が絶版となっているなかで最近刊行された渡辺克巳の最新写真集。洋書。



    先般亡くなった路上の写真家、渡辺克巳の写真集。インサイダーとして夜の新宿を流した彼の生の証はその写された人々と共に永く記憶されるべき。


    ジャパン
    倉田 精二
    4106024330
    渡辺克巳とくれば倉田精二を挙げずにはいられない。日本のウィージーと言われたストリートフォトの神髄。都市の殺伐と虚像をこれほど表現した写真はない。

    にっぽん劇場写真帖
    寺山 修司・森山大道
    4106024187
    寺山と森山のコラボレーションは「あゝ、荒野」以前にもこの作品で既に成就していた。68年刊のこの作品は強烈なコントラストとイメージで時代を色濃く表現している。腰巻きの惹句「奇才ふたりが火花を散らすイメージ地獄巡り」も凄いが、天井桟敷率いる寺山へぶつける森山の渾身の「返歌」が熱い。中平卓馬がカメラを構える有名なショットもあり。これを見ずに森山は語れない。


    奈良原の写真は既に絶版になった朝日新聞社の「昭和写真全仕事」を所有しているが、トラピスト修道院に取材した「沈黙の国」「人間の土地」「消滅した時間」などパースを駆使した知的で静謐な写真は独特の美。「無国籍地」は廃墟をモチーフにした写真集。その圧倒的な画面の構成美を。

    Cui Cui
    川内 倫子
    4902943026
    川内の作品は柔らかい光と深度の浅いクローズアップなどを多用して日常の「合い間」を独特の色調で表現している。小生の勝手な感覚ではあるが彼女の作品にはどこか「彼岸の匂い」のようなものが感じられてならない。明るく静かな日常。ふと視線を外して見上げる窓の外の空。こよないものたちの空間。この作品は家族の何気ない日常をテーマとした写真集。なぜだろう、頁をめくってゆくたびに胸が詰まってくるのは。


    この間東京都写真美術館で行われた回顧展で再び植田の仕事が再評価されている。砂丘シリーズに代表されるこのモダニズムはいつまでも古びない。

Blog People

無料ブログはココログ

search


  • Google

thank you!