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November 28, 2004

崔洋一 / 『血と骨』

新宿コマ前の小屋に行くのは普段あえて避けているので久しぶりだった。関係ないが今は無き噴水の前を通るたびに「俺たちの旅」のグズロクを思い出してしまう。さて、本題。これは梁石日原作になる同名小説の映画化だが、これほどビートたけしの役者としての本質に合う役柄はない。おそらく、映画の企画は彼を主役に据えることが無ければ成り立たなかっただろう。物語は梁石日の父親がモチーフになっており、大正の末、少年時代の金俊平が済州島から日本に渡航し、戦中戦後を経て北へ引き上げるまでの過激すぎる半生を家族の愛憎を絡めて描いたものである。
その過激の程度は確かに常軌を逸しており、充分映画的に魅力的なものを持っているが、モチーフとしては特別に数奇という訳ではない。むしろ特に昭和という時代においては描かれがちな家父長としての強権的な父親像なのだ。ただそれが度を超しているというに過ぎないのである。在日としての不遇と辛苦が背景に強烈に存在してはいるが、実はこれはありきたりな昭和の物語なのだと思う。
一代でたたき上げた蒲鉾工場の成功と高利貸しへの転身、徹底的な吝嗇と憎悪、それに翻弄される家族と滑稽なまでの暴力。原作を読んでいないのでなんとも言えないが、この金俊平という男の来し方が映画では描かれていないので、それが不明なまま観客は暴力をひたすら見せられることになる。この肉付けをもう少し、と思うのは私だけだろうか。
しかし、つまらなかったといいたい訳ではない。むしろ逆に出色の出来映えであると思う。これは後に残る映画だろう。
脇役の面々に個人的に好きな俳優が揃ったことも気に入った理由だ。特に北村一輝は三池崇史の「日本黒社会」(99年)以来のファンでもある。黒沢清「地獄の警備員」(92年)でデビューした松重豊はここに来て実力のある脇役としてますます存在感を増してきており今後の活躍が楽しみだ。ほか、河瀬直美「火垂」(2001年)の中村優子を見いだしたのはこの映画の存在意義の一つだととりあえず言ってしまおう。
またセットや小道具のディテールをおろそかにしていないのも好感が持てる。これは時代を描く映画では必須であり、物語以上に顧みられてよいことなのだが、特に邦画において軽んじられているのは何故か。予算の問題かも知れないが。
個人的には大好きな大杉連と田口トモロヲが出てなかったのがこの映画の良さの一つだといったら、怒られるかな。
崔洋一も今までの作品とは異なる思い入れがあったのではないかと想像するに足る重厚な作品だ。(2004年、144分)

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