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August 22, 2004

高梨豊 / 『東京人1978-1983』

第34回日本写真協会年度賞を受賞した「東京人1978-1983」は83年に書肆山田より刊行された。高梨は68年に中平卓馬、森山大道らとともに季刊「PROVOKE」に参加し、日本におけるコンテンポラリーフォト、いわゆる「コンポラ写真」の牽引者の一人となった。tokyo_jin.jpg74年に処女作品集「都市へ」を刊行したが、そのなかに83年刊行の同書の前身となる冊子「東京人」を同梱している。少々わかりにくいが、実は66年にカメラ毎日誌上で既に「東京人」を連載し、その結実したものが写真集「都市へ」に纏められた訳だ。だから83年刊行の「東京人」は正確には「東京人1978-1983」と題されたいわば続編なのである。tokyo-jin_obi.jpg
この写真集は装丁が特殊である。クラフト紙の函から出すと実は左右両側に2分冊となっており、それらはちょうど対になるように配置されている。頁は左右がお互いに1頁づつ交互に重ねられていて、観る者は1頁づつ両側にめくってゆくことになる。すると同時に3葉の写真を一度に観る格好になる。頁をめくれば1葉の写真を残したまま次の2葉が現れるのだ。この「動的な組写真」ともいうべき見せ方は、既存の概念を突き崩すPROVOKE同人らしい挑発に溢れている。
wareratakanashi0054.JPGしかし、写真は静謐で知的だ。前作で当時の高度経済成長で次第に無機質化していった都市の風貌が、80年代に入ると無機質は高度に定着してまるで人を排除するかのようだ。おそらく都市には思想というものがない。単に生物的な自律をもって隅々まで無言に増殖するだけなのだ。これは66年の「東京人」と並べて同時に観るべきものだと思う。

高梨はこの作品を撮る際に、「イメージの狩人」と「スクラップの拾い屋」という異なった二人の存在が自分の内にあったという。狩人は「もう東京は捉えた、この作品は打ち上げにしよう」とささやくが、次の日東京の路上に立つと新たなゴミが目の前に現れ、もう一人の自分たる「拾い屋」が<アッ! あそこにイメージがちらかってる>(高梨豊「われらの獲物は一滴の光」蒼洋社、S62=写真右)とささやくというのである。かくして厖大なカットが写され続けることとなる。このために編集作業に非常な時間を費やしたとあるが、これは「東京人」がその後発表される高梨の写真の根元に常に通じていることを象徴するかのようなエピソードだ。

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