« ミニコミスト!番外編 / 『Tokyo Notice Board』 | Main | 神保町 / 『茶房李白』閉店? »

July 31, 2004

L・フォン・トリアー / 『ドッグヴィル』 あるいは「アメリカ」への悪意

【ご注意:ネタバレしております。】トリアーの作品をみたのは「エピデミック」、「奇跡の海」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」につづきこれで4作目。かなり寓話性の強い作品ばかりだ。「ダンサー~」は話題となったが、60年代のアメリカンミュージカルをシニカルにパロディとした後味の悪い作品だった。ビョークの壊れそうな声ばかりがしばらく耳についた。当時の宣伝で試写会を終えた観客が泣いているシーンを再三にわたって放映していたが、あの涙は当時からズレているようにしか見えなかったがどうだろうか。最後のシーンが単にショックで泣いたのならまだ分かるが、貧困や可哀想な境遇に共感して泣くのだとすればズレまくりだ。ケレンをケレンと充分認識した上でしかける挑発の意図をこそ考えるべきなのだ。このデンマーク人はどうもアメリカ的なものをかなり嫌っているようだ。この「ドックヴィル」もアンチハリウッドの気配が濃厚で、人を喰ったような演出を臆面もなくぶつける監督の赤い舌が見えるかのようだ。
セットは最低限の調度と地面に引いた白線のみ。舞台演劇に近い演出と言えなくもない。ニコール・キッドマン扮するグレースはギャングに追われ村人に匿われる。しかしその善意と思われた行為も次第に村人の独善的な欲望を満たす代償の要求へと変貌してゆく。ただしなぜグレースが追われていたのかは最後まで明かされない。物語の終結に至るまでの不条理の集積は観客のストレスを巧妙に膨らませ、最後の反撃=カタルシスへと誘導してゆく。これは「奇跡の海」あるいは「ダンサー~」の主人公の復讐といえなくもない。

ローレン・バコールの今をみられるのは貴重だ。もう80を越えているのではないだろうか。2003年、177分■

« ミニコミスト!番外編 / 『Tokyo Notice Board』 | Main | 神保町 / 『茶房李白』閉店? »

CINEMA」カテゴリの記事

映画・テレビ」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21097/1090719

Listed below are links to weblogs that reference L・フォン・トリアー / 『ドッグヴィル』 あるいは「アメリカ」への悪意:

» 「ドッグヴィル」 人間の醜悪さを描き観客を不快にさせる達人ト... [Happy?レンタルビデオ万歳 ]
ドッグヴィル【DOGVILLE】★2003年ヨーロッパ映画賞 監督賞監督・脚本:ラース・フォン・トリアー 撮影:アントニー・ドッド・マントル  出演:ニコール・... [Read More]

» 【審判の日】「ドッグヴィル」/ラース・フォン・トリアー [Augustrait]
醜悪なカタストロフ  ベルトルト・ブレヒト(Eugen Berthold Friedrich Brecht;1898-1956)の三文オペラに、「海賊ジェニー」という劇中歌が登場する。 皆さん、ご覧の通り今のあたしは皿洗い どなたのベットもつくるわよ。 一ペニー貰ってヘイコラするわ ぼろを着て、ぼろホテルにいるわ でも知らないのよ、あんた方はあたしを。 でもある晩、港の方で叫び声がするの みんな聞くの、何だあの叫�... [Read More]

» ドッグヴィル(DVD)  [ひるめし。]
審判の日がくる。 CAST:ニコール・キッドマン/ポール・ベタニー/クロエ・セヴィニー/パトリシア・クラークソン 他 ニコール・キッドマン主演としか知らずに借りたらビックリ! まず時間にビックリ!177分だってさ。長っ・・・。 セットにもビックリ!まるで舞台のリハーサル用みたいな感じ。 ナレーションでストーリーを進めてくれるんで、まるで1冊の本を読んでいる感覚がした。 とにかく不思議な映画。 セットがあ... [Read More]

» 映画 『ドッグヴィル』 ラース・フォン・トリアー監督 [~Aufzeichnungen aus dem Reich~ 帝国見聞録]
鬼才トリアー監督が造った、「地味な日常から表面的な落ち着きを剥ぎ取り、その奥に潜むどろどろした人間の本性を裏の裏の裏まで引きずり出して見せつける」入魂の一作。一般的に「いやぁ、すんげー激濃で重い内容。もう満腹で吐きそう。たまらんわー」という感想が多いみ..... [Read More]

» 映画 『ヨーロッパ』 ラース・フォン・トリアー監督 [~Aufzeichnungen aus dem Reich~ 帝国見聞録]
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『ドッグヴィル』と、人間精神の裏面の奥深くに入り込みながら世界でもっとも後味の悪い「結晶」を抽出するデンマークの鬼才映画監督ラース・フォン・トリアーの初期作品。初期といいながら実は完成度が高いです。ある意味、この作品のつく..... [Read More]

« ミニコミスト!番外編 / 『Tokyo Notice Board』 | Main | 神保町 / 『茶房李白』閉店? »

NAVIGATION

無料ブログはココログ

search


  • Google

thank you!