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May 03, 2004

ドキュメンタリー / 映画『HARUKO』

5月1日、東中野の「ポレポレ東中野」にてドキュメンタリー映画「HARUKO」の初日上映に行った。ポレポレ座の前身「BOX東中野」の時代からここは仕事帰りのレイトショーに丁度よいためよく寄る映画小屋である。
porepore.jpg
実は、この日は20時から始まる車谷長吉原作の「赤目四十八瀧心中未遂」を観ようとして出かけたのだが、その前に予定していた野暮用が予想に反して早く終わってしまい、日本におけるサブカルの総本山、と勝手に私が思っている中野ブロードウェイ内のタコシェなどで時間をつぶしてはみたもののそれも限度あり、急遽、この「HARUKO」へ予定を変更したのだ。だから、この映画の事前知識はゼロだった。

しかし、これは結果的に大当たりだった。

この映画は在日1世として日本という異国で逞しく生きる金本春子の半生を記録したドキュメンタリーである。ヤミ商売での逮捕歴37回にして7人の子供を産み育てた野草のように逞しい母親。女を作って家庭を顧みない無責任な夫に苦しめられ、娘の一人は当時地上楽園といわれたプロパガンダに乗せられ北へ行ったまま連絡がつかない。一家離散という境遇に遭いながらもこの国に根を張り生きてきた春子は今年87歳。今でもエネルギッシュだ。

息子は総連のカメラマンとしての仕事の傍ら母親を記録し続けていた。新宿の二幸(現アルタ)裏での闇取引、逮捕連行、警視庁の入り口で母親の釈放を待つ子供らなどに向けフィルムを回し続けた映像がこの作品の鍵となっている。しかしこの映像の存在自体が驚きだ。

映画のフライヤーにあるとおり、これは在日家庭の特殊な話ではなく母親と家族の普遍的な物語であり、それがこの背景にありきたりなモチーフであることを拒んでいて感動をもたらすようだ。これを撮ったドキュメンタリストは明らかにそういう視線でこの作品を編んでいる。ともすれば重い内容も、誰もが思い当たる家族のありよう、関係性の滑稽で悲しく暖かいものを感じて客席から何度も笑いが起こったのは、この視点が成功しているからだろう。

春子は来日した12歳の時に海女をやっていた。いまその海に同じ境遇の友達を訪ねるシーンがある。突然海に入りたいという母親。息子、娘に両腕を支えられながらゆるゆると海に浸かる映像が印象的だった。いつの間にか自分の家族を重ね合わせて胸がつまった。

なお、この作品はフジテレビの番組「ザノンフィクション」でテレビ放映されたものを、その後の反響の大きさから再編集、拡大したものだそうである。ナレーションは原田芳雄。81分。この回は初日で監督野澤和之の舞台挨拶があった。

ちょっとポレポレの写真が大きすぎたかな。

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Comments

「HARUKO」の監督であります野澤和之が撮りましたドキュメンタリー・ドラマである映画「マリアのへそ」がDVD発売されます。大手メジャーが入らない自主制作の形で製作された作品で、2008年公開以来、上映会を重ねてきました。
この映画はフィリピンのストリートチルドレン一家を描いた作品ですが、その悲惨な暮らしぶりを描くのではなく、家族の愛情や絆を描いたもので、どこか「HARUKO」にも通じるものがある作品です。
以上、監督・野澤和之を取り上げて頂きましたので、ご報告させて頂きます。

どうぞどうぞ、告知なさって下さい。
もうDVDは出ているのかな。今度借りてみますね。

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    渡辺克巳

    097154803X
    新潮社フォトミュゼの「新宿」が絶版となっているなかで最近刊行された渡辺克巳の最新写真集。洋書。



    先般亡くなった路上の写真家、渡辺克巳の写真集。インサイダーとして夜の新宿を流した彼の生の証はその写された人々と共に永く記憶されるべき。


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    奈良原の写真は既に絶版になった朝日新聞社の「昭和写真全仕事」を所有しているが、トラピスト修道院に取材した「沈黙の国」「人間の土地」「消滅した時間」などパースを駆使した知的で静謐な写真は独特の美。「無国籍地」は廃墟をモチーフにした写真集。その圧倒的な画面の構成美を。

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    川内 倫子
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    川内の作品は柔らかい光と深度の浅いクローズアップなどを多用して日常の「合い間」を独特の色調で表現している。小生の勝手な感覚ではあるが彼女の作品にはどこか「彼岸の匂い」のようなものが感じられてならない。明るく静かな日常。ふと視線を外して見上げる窓の外の空。こよないものたちの空間。この作品は家族の何気ない日常をテーマとした写真集。なぜだろう、頁をめくってゆくたびに胸が詰まってくるのは。


    この間東京都写真美術館で行われた回顧展で再び植田の仕事が再評価されている。砂丘シリーズに代表されるこのモダニズムはいつまでも古びない。

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