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May 29, 2004

『遠野物語』 / 森山大道

森山に関しては既にあまりにも語られ過ぎていて、今さら敢えてなにも言う気がしない。しかし森山の登場は日本の写真シーンを考える上でもっとも重要な「事件」だったのであり、当時大量のエピゴーネンを生み出した。そしてそれは驚くことにいまだに続いている。tonosonorama.jpg
69年に創刊されわずか4回の発行で終了した雑誌「PRVOKE」は写真を巡る先鋭的な批評でその名の通り写真界を挑発した。もともと少部数だったため、これが古書市場に出れば高値がつくことだろう。最近、といっても何年か前に復刊されたような記憶があるが、ここ数年の森山再評価、というより森山ブームでいま次々と復刊や全集の刊行が行われている。この「遠野物語」も全集に収載されているようだ。

「遠野物語」は71年に朝日ソノラマより「現代カメラ新書」シリーズの1冊として刊行された。このシリーズは基本的には写真技法書なのだが、荒木経惟の「写真への旅」と並んで異色のラインナップとなっている。「森山大道語りおろし」と副題にあるように、前半は写真、後半が森山の独白の2部構成だ。そのなかで森山は、

ジグソーパズルってのがありますね。つまりハメ絵です。微細な部分にこだわることによって、全体像にアプローチしようという、きわめてペシミスティックなゲームです。僕は、あの感じが、僕と写真との感じに似ていて好きなわけです。(森山大道「遠野物語」朝日ソノラマ 1971 p.165-166)

と語っている。

これはまさしく森山の写真の本質をついているような気がしてならない。乱暴だが、例えば拡散する写真と凝集する写真があるとすれば、森山の写真は後者だろうと思う。彼の写真はディテールが凝集しているのだ。街の壁に貼られたポスターをそのまま複写したようなモチーフは彼の写真の随所にみられるが、それは単なる複写ではなく、部分としてのポスターに街の全体性を凝集させているということなのだろうか。それにしても写されたモノや風景はまるで呪物のようだ。
ちなみに、カバー見返しの著者紹介欄での名前の読みは「だいどう」ではなく、「ひろみち」となっている。■

【追記】
2007年4月、光文社より文庫版にて復刊された。
遠野物語

■関連エントリ
- 月球儀通信 : 森山大道『遠野物語』 光文社文庫より復刊
http://azusayumi.tea-nifty.com/fragment/2007/04/post_39bb.html

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