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March 18, 2004

『シモンのシモン』『人形作家』 / 四谷シモン 

写真家、細江英公が「ある私風景」と題した写真の被写体が四谷シモンだった。いま、その細部を思い出すことができないのだが、私が見たのは確か玄光社の写真技法書で作例として掲載されていたものだと思う。エコール・ド・シモンの年譜によると作品は71年となっている。

娼婦のような憂愁を纏ったシモンが古い家のまえでうなだれている。広角レンズのパースペクティブが鮮烈なモノクロームに定着されていた。グラビア印刷でもクオリティの高さが分かるほどだったから、おそらくアーカイバル処理されたオリジナルプリントは恐ろしく美しいだろうと想像した。

その当時、私はその後すぐに辞めることになる会社員という名の丁稚奉公一年生だったが、出勤の際、その日が銀座の青木画廊で行われていた個展の最終日だったことを思い出し、あまり悩みもせずにその日を「休み」にした、と確かに記憶していたと思ったのだが、年譜では83年以降、青木画廊での個展の記載がない。会社員として勤め始めたのは85年だったから矛盾しているのである。では私が行った個展はいつだったのか。

ようやく私が見たのは83年に「解剖学の少年」とタイトルされた個展だったことが判明してきた。どうも休みにしたのは大学の授業だったらしい・・・記憶が錯綜しています。

青木画廊では四谷本人があたかも展示の人形が並んでいるように椅子に足を組んで座っていたのが印象的だった。それまで写真でしか見ていなかった彼の人形を眼の当たりにして、彫刻と人形とは全く異なるベクトルの芸術であることを知った。
製法や素材を知りたくて、彼の人形を置く代官山のアンティークドール店の店員に訊くと「あぁ、シモンさんのは張り子でしょう。」と教えてくれた記憶がある。

その後近所の本屋でエッセイ集「シモンのシモン」(イザラ書房、75年)を注文し、到着を心待ちにしたりした。80年当時注文して入手したのは75年の初版だった。いま、手元に眺めながらこれを書いている。

その約20年後に半自伝「人形作家」(講談社新書,02年)が刊行され、以前から知りたいと思っていた様々な疑問や背景が鮮明になってきた。これを頭に入れて大島渚「新宿泥棒日記」を観ると60~70年代にトリップできる、ような気がする。いまでは伝説となった、天井桟敷と状況劇場の乱闘事件を当事者からみたエピソードなどは、70年代フリークには眼の毒だ。(これは69年だが)

中野タコシェで買った雑誌「ヒッティ」の四谷シモン特集が最近の収穫。
四谷の弟で写真家の渡辺兼人については、別の機会に是非感想を書いてみたい。

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