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March 13, 2004

写真集 『流れの歌』 / 鈴木清

70年代は、中平卓馬、森山大道に代表されるようなブレボケのいわゆるコンポラと呼ばれたスタイルが写真のシーンであり、それが時代の空気でもあった。当時小学生だった私はよく分からないながらに、なにかに突き動かされる当時のお兄さん、お姉さんたちに漠然としたあこがれをもって眺めていた。

初めて鈴木の写真に触れたのは83年頃日本カメラに連載されていた「gypsy wind(私の12冊)」だった。
極度に観念的で私的な写真のモノローグは、当時学生だった私を圧倒した。
それまで森山などの写真に惹かれてはいたが、鈴木の写真にはその底に、やむにやまれぬ業、のようなものがあった。そこにはブレボケアレの即物的なコンポラの流れとは異なるポエティークがあった。これはなんだろうか。

鈴木の写真をもっと見たいと思い書店で写真集を探したが、彼の写真集はほとんどが自費出版で書店では手に入らなかった。意を決して鈴木本人に電話をした。連絡先をどう調べたか思い出せない。後で知ったのだが、鈴木は生計のために看板書きをしながら営々と写真を撮っていたのだ。そのときは奥さんがまず電話に出たような記憶がある。

学生からの突然の電話に迷惑がることもなく、むしろ暖かく私の拙い感想などを聞いてくれた。写真を撮っているんですか。今度見せてくださいよ、とまで言ってくれた。彼の訥々とした話しぶりが今でも思い出せる。こちらがなにを話したのかはよく覚えていないのだが。今にして思うと恥ずかしい限りである。
その後日吉の学生だった私は、駅の反対側にあった横浜綜合写専で鈴木をたびたび見かけたりした。

届いた写真集は、彼の処女作である「流れの歌 soul and soul」だった。綺麗じゃないけどこれしかないから、と鈴木が言っていたように、貴重な手持ちのなかからの1冊だった。奥付にサインがある。

炭坑の町から温泉場の田舎芝居小屋、そして旅館の畳に置かれたブリキの洗面器に浮かぶ "つけまつげ"も、遠い昔の自分の記憶のように印象的である。このなかで流れてゆく彼の目は一貫して自身の内面を凝視しつづけているのだった。

このような私小説のような写真表現があり得るのだ、と当時の私は再び感動した。

その後「天幕の街」「ブラーマンの光」から80年代終盤の「夢の走り」に至るまで、彼の創作活動を注視していたが、飽きっぽい私はしばらく写真から遠ざかっていた。彼は後に伊奈信男賞、土門拳賞を受賞したことで知られる。

いま、これを書こうと思ったのは、書棚の整理をしていたおり偶々この「流れの歌」を見つけ、懐かしさからWEB検索をしたところ、鈴木がすでに物故していたことを知ったからである。

これをきっかけとして、これからしばらく写真集、写真家などについてもつらつらと書いてみたい。

流れの歌
2010年、白水社から復刊されたようです。

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    渡辺克巳

    097154803X
    新潮社フォトミュゼの「新宿」が絶版となっているなかで最近刊行された渡辺克巳の最新写真集。洋書。



    先般亡くなった路上の写真家、渡辺克巳の写真集。インサイダーとして夜の新宿を流した彼の生の証はその写された人々と共に永く記憶されるべき。


    ジャパン
    倉田 精二
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    渡辺克巳とくれば倉田精二を挙げずにはいられない。日本のウィージーと言われたストリートフォトの神髄。都市の殺伐と虚像をこれほど表現した写真はない。

    にっぽん劇場写真帖
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    寺山と森山のコラボレーションは「あゝ、荒野」以前にもこの作品で既に成就していた。68年刊のこの作品は強烈なコントラストとイメージで時代を色濃く表現している。腰巻きの惹句「奇才ふたりが火花を散らすイメージ地獄巡り」も凄いが、天井桟敷率いる寺山へぶつける森山の渾身の「返歌」が熱い。中平卓馬がカメラを構える有名なショットもあり。これを見ずに森山は語れない。


    奈良原の写真は既に絶版になった朝日新聞社の「昭和写真全仕事」を所有しているが、トラピスト修道院に取材した「沈黙の国」「人間の土地」「消滅した時間」などパースを駆使した知的で静謐な写真は独特の美。「無国籍地」は廃墟をモチーフにした写真集。その圧倒的な画面の構成美を。

    Cui Cui
    川内 倫子
    4902943026
    川内の作品は柔らかい光と深度の浅いクローズアップなどを多用して日常の「合い間」を独特の色調で表現している。小生の勝手な感覚ではあるが彼女の作品にはどこか「彼岸の匂い」のようなものが感じられてならない。明るく静かな日常。ふと視線を外して見上げる窓の外の空。こよないものたちの空間。この作品は家族の何気ない日常をテーマとした写真集。なぜだろう、頁をめくってゆくたびに胸が詰まってくるのは。


    この間東京都写真美術館で行われた回顧展で再び植田の仕事が再評価されている。砂丘シリーズに代表されるこのモダニズムはいつまでも古びない。

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